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再エネは、エネルギー安全保障でもある。──元環境大臣・浅尾慶一郎氏に聞く、「電気のダム」としての系統用蓄電池

再生可能エネルギーを「主力電源」に押し上げるうえで、電力需給を調整する系統用蓄電池への期待が高まっています。第33代・第34代環境大臣を務め、現在は参議院・経済産業委員会に所属する浅尾慶一郎氏に、再エネ主力電源化の課題と、系統用蓄電池が果たす役割について伺いました。

「地域の脱炭素にも、災害にも役に立つ」──なぜ、この対談が実現したのか

取材は、弊社代表・八賀晋太朗との縁をたどるところから始まりました。浅尾氏が最初に八賀と引き合わされたのは、ある会合の場。その後も2〜3回、顔を合わせる機会があったといいます。印象に残っていたのは、自治体に向けた提案の内容でした。

非常に自治体向けに、いいご提案をしていただいておりまして。地域の脱炭素にもお役に立ちますし、災害にもお役に立つような取り組みをされておられる(浅尾氏)

再生可能エネルギーと蓄電池は、脱炭素の文脈で語られることがほとんどです。しかし電気を貯めるということは、非常時にそこから電気を取り出せるということでもある。平時の脱炭素と、有事のレジリエンス。その両方を見据えた評価から、対談は始まりました。

世界を見渡すと、課題は2つある

――浅尾先生がいま、環境やGX、エネルギー政策の中で特に重要だと考えている課題は何でしょうか。

浅尾 世界的に言うと2つの大きな課題があります。ひとつは、アメリカでトランプ政権が誕生し、気候変動については従来と違う考え方を示していること。もうひとつは、ホルムズ海峡に関わることです。再生可能エネルギーは国内で作られるわけですから、基本的にはそれはエネルギーの安全保障にもつながる。この2つが、GXの中での大きな課題だろうと思います。

トランプ政権の考え方はそうですが、世界の中でお金を運用する機関投資家がどういうルールで運用するかについて言うと、GXや気候変動に関わるルールは変わっていない。

アメリカの政権が変わったとしても、世界全体の潮流というのは変わってきてはいないんじゃないかな(浅尾氏)

日本については、昨年国連へ次期NDCを提出し、2050年ネットゼロに向けて「直線軌道」で削減が進んでいるとした上で、風力は「価格が合わず撤退したところもあるので、再度立ち上がりをしていかなければいけない」、都市部では軽量なペロブスカイト型太陽電池をビルに貼り付ける新たな可能性にも言及がありました。

編集部注:日本は2025年2月、次期NDC(国が決定する貢献)として2035年度に2013年度比60%削減、2040年度に73%削減という目標を国連へ提出済み(環境省)。

「電気のダム」──九州で電気を捨てている現実

――系統用蓄電池は、まさに再エネの変動という課題を解決する手段の一つだと考えています。具体的にどのような可能性を感じていらっしゃいますか。

浅尾 再生可能エネルギーは晴れているか曇っているかで発電量が変わりますし、夜は発電していない。非常に波があると。風力も、風の強さで変わってくる。だからこそ、できたものを貯めておくものが大事になってくるだろうと思います。

例えば九州は、すでにある発電能力だけで、太陽光の能力だけで九州全体の発電をまかなえる。ただ、発電されない時を考えると他の電源も必要になる。

逆に言うと、余っても捨てているというところもありますから、それはもったいない。そういうものを貯めるための蓄電池が必要になってくる(浅尾氏)

実際、九州本土では再エネの出力制御(発電の抑制)が常態化しており、2023年度の制御量は約12.9億kWhにのぼります(九州電力送配電)。「もったいない」は感覚ではなく、実量の話です。

――普及に向けては、制度面や地域との連携も必要になってくるのではないでしょうか。

浅尾 系統用蓄電池を増やしていく、要するに電気のダムですから。足りないときにそこから流れるようにしておくと、安定的に必要な電源が出てくる。そういうものを整備していくことは意義があることだろうと思いますし、電気を安定的に供給できることは、これからAI・データセンターで需要が伸びることを考えても重要になってくると思います。

Fit Founderは現在、埼玉県秩父郡小鹿野町で出力2MW・容量8MWhの系統用蓄電池プロジェクトを進めており、2027年1月の運転開始を予定しています。浅尾氏の言う「電気のダム」を、私たちも現場で形にしているところです。

「ビジネスチャンスとして捉えてほしい」──民間事業者に期待すること

――GXを進める上で、民間事業者が現場から取り組むことに、どのような意義を感じていらっしゃいますか。

浅尾 再生可能エネルギーは、原子力のように常に一定量が出てくるものではありません。そこを補う意味での蓄電池は重要になってくると思います。

そこを一つの、逆に言えばビジネスチャンスとしても捉えていただいて、補っていけるような仕組みを構築してもらえると、大変ありがたい(浅尾氏)

制度が整うのを待つのではなく、事業として成り立たせながら社会課題を解いていく。金融の世界を経て政治に入った浅尾氏らしい、事業の持続性から逆算する視点でした。

地域の活力と、事業者の健全な経済発展と

――最後に、地域の皆様や、これからGX・再生可能エネルギーに取り組んでいく事業者の方々へメッセージをお願いします。

浅尾 異常気象は世界中で、日本でも発生しています。気候変動への対策はしっかりやっていかなければいけない。これは間違いないことです。

日本全体のため、そして世界全体のためになるということだけではなくて、それが地域の活力にもなり、事業者の健全な経済発展につながるという観点で、ぜひ頑張っていただけると大変にありがたい(浅尾氏)

おわりに

環境大臣として2050年カーボンニュートラルを所管し、現在は経済産業委員会で電力政策の実務に近い立場にある浅尾氏。「増やす」と「安定させる」の両方を見てきた立場から語られたのは、系統用蓄電池を「電気のダム」と呼ぶ、明快な見立てでした。

Fit Founderは、系統用蓄電池の開発・販売事業者として、小鹿野町案件(2MW/8MWh、2027年1月運転開始予定)をはじめ全国でプロジェクトを推進しています。浅尾先生、お忙しいところ貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。

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プロフィール:浅尾 慶一郎(あさお・けいいちろう)

参議院議員(神奈川県選挙区・自由民主党)。第33代・第34代 環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災)。

東京大学法学部卒業後、日本興業銀行へ入行し証券アナリストなどを務める。スタンフォード大学経営大学院にてMBAを取得。1998年に参議院議員初当選。衆議院議員を3期務めた後、2022年より再び参議院へ。参議院財政金融委員長、外交防衛委員会筆頭理事、参議院議院運営委員長などを歴任し、2024年10月から2025年10月まで環境大臣として2050年カーボンニュートラルの実現に取り組む。現在は参議院・経済産業委員会に所属し、環境大臣として培った知見を電力政策の実務にも活かしている。自由民主党 党紀委員長、税制調査会副会長を兼務。

独自の政策テーマとして「人工光合成」の技術開発を一貫して提唱。鎌倉市在住。

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